なぜ事業が譲渡されるのか
日本で中小企業の持ち主が替わる理由は、業績の行き詰まりよりも、経営者の年齢と後継者の不在に関わるものが大きな割合を占めます。そのため買い手が向き合う売り手の心情は、純粋な財務的売却とは異なります。価格と同時に、従業員の処遇、取引先との関係、そして屋号が続くかどうかを気にかけておられることが多いのです。台湾からお越しになる買い手にとって、これは機会であると同時に要求でもあります。資金と長期の意思を併せ持つ相手は多くない一方で、交渉の場では提示額だけでなく、買い手ご自身が見られているからです。
二つの取得の方法
取得の方法は大きく二つあります。ひとつは株式の取得で、会社の法人格がそのまま続き、契約も従業員も許認可も原則として会社の中に残ります。手続は比較的簡明ですが、既存の負債や潜在的なリスクも併せて引き継ぐことになります。もうひとつは事業譲渡で、指定した資産・契約・人員のみを承継します。範囲を切り分けられる反面、契約は相手方ごとに同意を得る必要があり、従業員とは雇用関係を結び直すことになり、業種によっては許認可が承継されず改めて申請を要する場合もあります。どちらが適するかは、事業の性質、許認可の種類、そしてリスクの分担についての合意によって決まります。
案件の進み方
- 秘密保持契約を結び、初期の資料を受領して互いの意向を確かめます
- 経営者との面談を通じて、事業の実際の回り方と引継ぎの希望を伺います
- 価格の幅と主要な条件を記した、法的拘束力のない意向表明を提出します
- 財務・税務・法務・労務のデューデリジェンスを行います
- 調査の結果を踏まえて条件を調整し、最終契約を締結して実行します
- 実行後の移行期間。前経営者の関与、取引先へのご挨拶、従業員への説明を含みます
海外からの買い手が留意される点
業種によっては、外国投資家による取得について、外国為替及び外国貿易法の枠組みのもとで事前の届出が必要となる場合があります。該当するかどうかは業種と取得割合によりますので、検討の初期に確認しておくことをお勧めします。また実行後には、日本で実際に事業を動かす方が必要です。代表者の体制、銀行取引の継続、従業員への説明の仕方は、事業の安定に直接影響します。日本の雇用実務は台湾とは異なり、人員や処遇を調整する自由度は限られますので、この点は評価の段階から織り込んでおくほうが無理がありません。取引の帰趨は個別の事情に左右され、結果をお約束できる手順はございません。私どもは全体の日程と対話の整理を担い、実際の調査や書面は提携する有資格専門家が担当します。
本稿は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務・法務・投資・入管に関する助言ではありません。適用される法令や手続は業種やご事情によって異なりますので、実際のご判断にあたっては各分野の有資格専門家にご確認ください。