高級住宅という言葉が指すもの
東京において高級住宅は、価格だけで区切られたひとつの市場ではありません。実際には、都心の限られた街区に残る低層の住宅地、設計事務所の手による小規模な集合住宅、超高層の上層階、そして数の少ない一戸建てといった、性格の異なるいくつかの層が並んでいます。層が違えば買い手も違い、流動性も価格の決まり方も異なります。港区・渋谷区・千代田区の一部では土地の供給がほぼ固定されており、用途地域による高さや密度の制限も重なるため、新規の供給はもともと限られています。地名を覚えることよりも、自分が入ろうとしている層がどれなのかを見極めることのほうが、実務上は役に立ちます。
長期の価値に関わる視点
- 用途地域と高さの制限、すなわち街区の静けさがどこまで保たれる見込みか
- 建物の耐震設計の世代と、その後の補強・点検の記録
- 管理組合の財務、とりわけ修繕積立金の水準と長期修繕計画の実効性
- 敷地の持分と建物規模の関係、将来の建替え時における自由度
- 同一物件・同一街区における成約事例の安定性と、売却時の流動性
- 学校・医療・交通といった生活圏の条件。自用でも賃貸でも意味を持ちます
情報の流れ方
この層の物件が、すべて公開の物件情報に載るわけではありません。売主の側に、ご家族の事情や税務上の時期といった理由があり、限られた業者を通じて静かに打診されることもあれば、公開に至る前に既存のお客様の間で話がまとまることもあります。したがって東京では、適切な選択肢に出会えるかどうかが、予算の大きさよりも情報の経路に左右される場面があります。一方で、非公開の情報は比較の材料が乏しく、参照点のないまま判断してしまう危うさも伴います。私どもは提携する不動産業者を通じて確認可能な成約事例や管理の資料を取り寄せ、必要に応じて各分野の有資格専門家に個別の論点を見ていただくことで、同じ土俵で比べられる状態を整えるようにしています。
自用と収益のあいだで
ご自身でお住まいになるのであれば、街の静けさ、日照、動線、管理の質が、表面的な利回りよりも重く効いてきます。収益を目的とされるのであれば、入居者の層、賃貸借契約の形態、運営に要する費用が判断を主導します。両者の最適解は必ずしも一致せず、ひとつの物件で双方を満たすのは容易ではありません。先に目的を言葉にしてから候補を絞るほうが、後半での揺り戻しが少なくなります。価格や賃料の水準は、市況・金利・為替によって動くものであり、将来の方向をお約束できる立場の者はおりません。先に確かめられるのは、物件そのものの条件と、保有期間に実際に出ていく費用です。
本稿は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務・法務・投資・入管に関する助言ではありません。市況や適用される取扱いは時期やご事情によって異なりますので、実際のご判断にあたっては各分野の有資格専門家にご確認ください。